好きな人の肖像 4

森茉莉です。

 

この人の2冊のエッセイ「私の美の世界」「贅沢貧乏」の妄想力というか、つつましいアパート暮らしのひとつひとつのお気に入りの物を強引に自分の優雅で豪奢な美意識に染めてしまう感覚、しかもそれを客観的に、おかしな婆さんである自分を含めて、やや辛辣にユーモラスに描くセンスが大好きです。

 

今流行りの「丁寧で上質でシンプルで豊かな生活」と混同されがちだけど違うんです。正反対かもしれない。

混沌とした生活感のあるごちゃごちゃの中に、うっとりと自分の好きな世界を紡いで暮らしているような、たいへんたくましい妄想力に憧れます。

私も「丁寧で上質」よりも「混沌の妄想」の方ががずっと好きです。

 

じつはエッセイは好きなのに小説の方は読んでないんですが。

海外映画俳優二人のプライベートスナップ写真か何かを見て妄想して描いた耽美で華麗な同性愛小説らしく、なんだか今のBL腐女子の元祖みたいと思ってしまいます。(ファンの方に怒られるかな。)

 

そんなところも、十代の少女の、飛躍しがちな妄想力をもったままで磨きをかけて年を重ねたようで、すごい人だと思います。

 

住んでいる街を背景にしたスナップ写真みたいな普段着の肖像写真の、ちょっと居心地の悪そうな表情が少女っぽくていいなと思って描きました。